経営管理ビザの取得要件ポイントを解説!

1.経営管理ビザについて

経営管理ビザとは、外国人が日本で会社を経営するために必要な在留資格です。

入管法では日本で貿易その他の事業の経営を行い、または当該事業の管理に従事するための活動を行うための在留資格と定められています。

経営管理ビザは、平成26年の法改正により従前の投資経営ビザを改正して作られたもので、投資経営ビザとは異なり、外国人による投資が必須要件ではなく、投資をすれば取得できる、というビザではありません。例えば、現在「就労ビザ」や「技能ビザ」、「留学ビザ」や「家族滞在ビザ」などを持っている外国人の方が起業する場合は、在留資格を「経営管理ビザ」に変更する必要があります。経営管理ビザ在留期間には3ヶ月、4ヶ月または6か月、1年、3年、5年があります。

2.経営管理ビザの申請フロー

経営管理ビザの申請は、すでに会社がある状態でなければ申請できない在留資格です。それでは申請に至るまでの流れはどのようになっているのでしょうか。

申請までの流れは以下の通りです。

経営管理ビザの申請までの主なフロー

経営管理ビザの申請までの主なフロー 
 
1.個人名義契約による事業所の確保 (設置条件には要注意) 
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2.会社設立の手続き(定款等の作成) 
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3.公証役場で定款を認証(株式会社の場合) 
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4.会社の資本金振込を実施 (500万円以上) 
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5.会社設立登記、税務署への開業届等の提出 
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6.事業に必要な営業許可の申請 
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7.事業所について会社名義への名義変更手続き 
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8.入国管理局へ経営管理ビザ申請を行う  

3.経営管理ビザの要件について

経営管理ビザに限らず、就労を目的とする多くの在留資格では、原則として4つの要件を満たす必要があります。

1 申請人が行おうとする活動がその在留資格に該当するかどうか(在留資格該当性)
2 その在留資格について求められる基準に適合しているかどうか(上陸許可基準適合性)

3 上記「在留資格該当性」と「基準適合性」を提出資料によって立証すること

4 犯罪歴など特別な問題ないこと

そして、上記1と2を経営管理ビザの要件に当てはめると、次のように分解できます。

【在留資格該当性】
① 事業の「経営」または「管理」業務を行うこと
② 事業が適正に行われること
③ 事業が安定的・継続的に行われること

【上陸許可基準適合性】
④ 事業所が確保されていること
⑤ 一定以上の事業規模があること
⑥ 「管理」業務に従事する場合、3年以上の経験があること
⑦ 「管理」業務に従事する場合、日本人と同等以上の報酬を受ける

最初に「在留資格該当性」について解説して行きます。


① 事業の「経営」または「管理」業務を行うこと

入管法には、経営管理ビザの活動内容を次のように規定しています。

「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」

上記の条文の解釈は、”予定する活動が事業の「経営を行う活動」または「管理に従事する活動」であるか”ということです。

「経営を行う活動」とは、事業の経営に参画する者(代表取締役、取締役、監査役等の役員)として、事業を運営する活動を指します。

「管理に従事する活動」とは、大企業の役員あるいは部長クラス、小規模事業所では代表取締役等による当該事業活動を管理する活動を指します。これらの活動に従事するということを、書面により立証していく必要があります。

② 事業が適正に行われること

次に、立証が求められるのが「事業の適正性」についてです。

経営管理ビザで行おうとする事業の内容には、入管法上は特に制限ないものの、その事業は法律に従い、適正に運営されなければなりません。具体的には、許認可等が必要な事業を行う場合は、許認可の取得が要件になります。例えば、飲食店を営業する際の飲食店営業許可などです。

③ 事業が安定的・継続的に行われること

在留資格該当性の3つ目の要件としては、「事業の安定性・継続性」が求められます。

経営管理ビザにおいては、会社が安定的に利益を出し、事業が継続的に行われていることが特に重要視されています。

既に初回の決算報告を終えている既存の会社であれば、決算報告書によってその実績を証明することが出来ますが、特に設立間もない会社においては、将来に向かっての事業の継続性を示すには、事業計画書によって安定性・継続性を示す他なく、事業計画書の良し悪しが経営管理ビザの取得可能性に大きく影響しますので以下の内容について説明していきます。

<事業計画書に含めるべき主な内容>

・事業概要 ・経営理念 ・代表プロフィール ・サービズの特徴とプラン

・価格設定 ・集客方法 ・取引先/仕入れ先/外注先 ・事業のこれまでの進捗

・今後の人員計画 ・組織体制 ・今後1年間の損益計画書

次に「上陸許可基準適合性」について解説します。

「上陸許可基準適合性」は、日本に上陸する場合のみならず、ビザの変更や更新の際にも求められる要件となります。また、経営管理ビザにおいては、事業の「経営」を行う場合と事業の「管理」を行う場合があるところ、「管理」を行う場合には、追加の要件が求められる点にも注意が必要です。

① 事業所が確保されていること

経営管理ビザの上陸許可基準の一つの要件として、日本国内に「事業所が確保されている」ことが必要です。

そして、「事業所が確保されている」と言えるためには、専有の「独立したスペースが確保」されていること、そして、事業所として機能するために十分な「物的・人的設備が確保」されていることが求められます。オフィス形態毎に具体例を示すと、バーチャルオフィスは一般的に専有スペースが存在しないため、事業所として認められません。
一方、シェアオフィスのように、他の事業者が使用するスペースと明確に区分された専有スペースがあれば、要件を満たすことになります。

次に、「物的・人的設備が存在している(確保されている)」とは、事業を運営する上で必要な人やモノが確保されているということを意味します。この判断は事業内容によって異なります。よくあるケースとして、「自宅の一部を事務所として使用して良いか?」というご質問を受けることがあります。考え方としては、新たに物件を借りる場合も、自宅兼事務所として使用する場合も同じです。「独立したスペース」というポイントで、居住スペースと事業のために使用するスペースを明確に区分しなければなりません。例えば、1階は事務所、2階は住居といったように明確に区分することができるのであれば、事業所として使用出来ます。

② 一定以上の事業規模があること(イ・ロ・ハのいずれかに該当していること)

次に解説をするのは、「事業規模」に関する要件です。
経営管理ビザの申請を検討されている方の多くがご存じの「500万円」は、この要件の問題です。たまに「必ず資本金が500万円ないといけない」という認識の方がいらっしゃいますが、それは誤解です。

「事業規模」の要件は、以下のように資本金の要件を含む複数の要件のうち、いずれか1つに該当していれば足りるためです。

申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。
イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。
ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。

以下において、各要件を簡単に解説していきます。

イ.本邦に居住する2人以上の常勤の職員が従事して営まれるものであること

日本人・永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者の従業員が2人以上必要ということです。なお、経営管理ビザを申請する本人は、カウントされませんのでご注意ください。また、「常勤」というためには、パートタイマーやアルバイトでは足りず、週5日以上で1週の所定労働時間が30時間以上の方でなければなりません。
ちなみに、派遣や請負などの雇用形態の者は、含まれませんので注意をしてください。

実務上は以下の資本金500万円の要件により、経営管理ビザを申請するケースがほとんどです。なぜなら、仮に常勤職員2名を雇用した場合、それぞれの月給が20万円だと想定すると、従業員2名へ支払う給与及び社会保険料等の総額は、年間500万円を優に超えてしまうため、スタートアップ企業には不向きだからです。

他方、常勤従業員の要件によって事業規模の要件を満たす場合の代表例は、飲食店の経営です。

飲食店を経営する場合には、日常的に調理・接客業務が発生しますが、これらは経営管理ビザの“経営活動”には該当しません。調理・接客・販売活動を行う現業活動は原則として認められず、これらの現業活動は、従業員に任せる必要があるため、常勤従業員の要件により事業規模の要件を満たすケースが多くあります。

ロ.資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること

この要件は、事業が会社形態で営まれる場合(例えば株式会社や合同会社)を前提としています。この点、出資者が経営管理ビザを取得しようとする外国人本人でないといけない、と思っている方が多くいらっしゃいます。しかし、資本金の額又は出資の総額が500万円以上であれば足りるため、必ず申請人が500万円以上を出資しないといけないわけではありません。

ただし、出資の割合が事業を行う上での意思決定に大きく影響することから、経営活動の信ぴょう性という観点から、「申請人=出資者」という構図は資格取得上は有利に働きます。

ハ.イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること

個人事業の形態で、従業員を2人以上雇用する予定のない場合には、この要件を満たす必要があります。「準ずる規模」と認められるためには、営まれる事業が実質的にイ又は口と同視できるような規模でなければなりません。常勤従業員がいない場合には、500万円以上を出資して営む事業であれば、この要件を満たします。常勤職員が1人の場合には、もう1人の常勤職員を雇うのに要する費用(概ね250万円程度)を出資して営む事業であれば、この要件を満たします。

③ 「管理」業務に従事する場合、3年の経験があること

ここからは「管理」業務に従事する場合に特有の要件を解説していきます。

まず、何の実務経験・学歴も必要としない「経営」に対して、「管理」業務に従事する場合は、3年以上の実務経験を必要としています。
この実務経験には、実際に「経営・管理」にあたる業務に従事した期間に加えて、大学院で経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含みます。そのため、「経営・管理」業務の実務経験が3年無くても、例えば、大学院のMBA課程に3年間在籍していた方は、この要件を満たすことになります。

④ 「管理」業務に従事する場合、日本人と同等以上の報酬を受けること

次の特有の要件は、日本人が同業務に従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬を受けることです。国籍を理由とした不利益的取り扱いを禁止する趣旨で設定されています。

会社に賃金規程があれば、日本人同様にそれに従った報酬が支払われる必要がありますし、賃金規程が無ければ、その職務内容や責任の程度等から、比較対象となる日本人の報酬額を考慮し、合理的な金額の報酬を支払わなければなりません。

4.専門の行政書士に頼むメリット

これまでの解説からもお分かりの通り、「経営管理ビザ」の申請は多くの論点を含んでおり素人が行うよりも専門家に任せることをおすすめします。具体的な理由は以下の通りです。

① 経営管理ビザの申請はプロでも時間がかかる大変な作業だから
② 経営管理ビザは失敗するとリスクの高いビザだから

それぞれみていきましょう。

① 経営管理ビザ申請はプロでも莫大な時間がかかる大変な作業

ビザの取得手続きは、専門家でも時間をかけて申請しなければならない大変な作業です。

自分でビザを申請する場合、ほとんどの人が初めて申請する人たちなので、なかなかうまくいかないことが多く、相当な時間がかかってしまいます。

その上、自分でビザ申請した場合は、かなりの確率で不許可となる場合が多いので、時間と労力が無駄になり、結局専門家に依頼することになる人がかなりの割合で存在するのが現実です。専門家でも大変な作業であるビザ申請は、自分ですると失敗する可能性が高いことを理解して、初めから専門家に相談することをおすすめします。

②「経営管理ビザ」は失敗するとリスクが高いビザ

「経営管理ビザ」は、失敗した時のリスク・ダメージが大きいビザです。

なぜなら「経営管理ビザ」は、会社を設立し、事務所を借りて多額の出資をした後で申請するビザだからです。「経営管理ビザ」が取れなくても、事務所の家賃などは発生し続けます。にも関わらず「経営管理ビザ」が取れないと経営者として活動できず大きな損害になります。

「経営管理ビザ」を確実に取得して、1日でも早く経営者として活動できるように、「経営管理ビザ」の申請は専門家に依頼して確実に取得することをおすすめします。

5.経営管理ビザ取得要件まとめ

「経営管理ビザ」の取得要件について、ポイントを絞ってお伝えしました。

この記事を読んで、あなたが「経営管理ビザ」についての知識を深め、申請許可にチャレンジされることを祈っています。

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